素材力

素材には力がある。

本物の素材は、それだけで人を、う〜んと唸らせることができる。
これも、そうだった。

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日本クスノキ。

佐賀で家づくりをコーディネートした時、たまたまランチに行ったカフェで
衝撃の出会いがあった。

店に入った瞬間に、なんとも言えない〝ハスキーな〟香りが鼻腔をくすぐっ
たのだった。なんだ、コレは? ハッカのような、潔い清潔感にあふれ、思
わず深呼吸したくなる香り!

それが、この日本クスノキだった。
聞けば、このカフェ、日本の森にあるクスノキにこだわり、それだけを使っ
て様々なクスノキ商品を開発しているのだという。消臭剤やオイル、クスノ
キブロック、家具、そしてクスノキの床材。秀逸だったのは、クスノキを貼
ったトイレの引戸。それはそれは、なんとも言えずゴージャスだった。

価格を聞いたら、我々庶民がとてもとても使えないという値段でもない。し
かし私が標準的に使っているスギ30ミリ厚よりは2倍以上の価格だ。
そこで、何人かの建主さんにご提案したのだが、なかなか即採用とはならな
かった。苦節、数ヶ月。何組目かの建主さんがそのカフェにまで足を運び意
を決して採用を決定。ようやく日本クスノキを使った住まいの誕生となった。

どんな力が、建主の心を動かしたのだろう。
この日本クスノキの場合、香りも凄いのだが、ワイルドな色味が独特な存在
感を主張する。他を圧倒するほどだ。そこで、壁の仕上げや棚などの家具、
引戸の類いの建具では、その色味と競合しないような落ち着いたトーンの色
使いとなった。淡いグレーやブルーの塗装でキッチン収納などを彩ったのだ。
完成した空間は、その意図が見事に功を奏したものだった。
玄関からリビングへ、そして階段から2階へ。すべてに日本クスノキの折重
なる地層のようにワイルドな縞模様が足下を誘ってくれる。加えて、この五
感を刺激する香り。まるで森に佇むリゾートホテルにでも来たかのような感
覚が身を包んでいく。
そうか、この素材には、人を異空間に運びさる魔法のような力があるのだ。
たぶん、なんとなくそんなことを感じたからこそ、建主はこの日本クスノキ
を採用したのだろう。

素材には、力がある。私はそれを素材力と呼んでいる。
それを見たり、触れたりするだけで、心を躍動させるなにかが潜んでいるこ
とがあるのだ。

だからこそ、私はこう考える。
素材から発想をはじめる家づくりがあっても良いと。そこから想起される物
語を追い求めて、建主も建築家も大工も左官も、一つの完成形をめざして動
き出せば人知れないアドリブに満ちた芝居を観ているようで、たぶん面白い。

この素材力に満ちた住まいは、
5月22日に開催するオープンハウスでご覧いただける。

2016-05-16 | Posted in 365day's gallery, 旅に向かうNo Comments » 
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